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二年生の後半のことです。学習面での遅れが気になり教頭先生に相談したところ、ろう学校を勧められたのです。悩んだあげく主人と話し合い、転校させることに決めました。
ろう学校では、口話法での指導でしたが友だち同士は手話を使っていました。音のある世界から一変して音のない世界へ。また、友だちの手話はわからなく、自分の言うこともうまく通じない。息子は不安と孤独感でいっぱいのようでした。
私たちは悩みました。この子にどんな教育をしたらよいのかと。結局、半年でろう学校から元の清水小学校へと戻ってきたのです。小学校三年の春のことでした。学校側では、「子供の能力に合った学習を」ということで、特殊学級に。文章面での弱さはありましたが、他の教科は普通学級で学習することは可能でした。
ところが再び四年生の春、教頭先生から、「お母さん、転校は自由ですが今後のことを考えたら、やはりろう学校がよいと思います」とのお話しがあったのです。私には聞こえる世界での教育から息子を断ち切ることへの抵抗がありましたが、再度ろう学校へ転校することにしたのです。
学校側は気持ちよく受け入れてくださいました。このとき校長先生から、「お母さんの気持ちが揺れることで、息子さんも安心できないのでしよう。それに親は子供よりも先に死ぬのですよ」と短く、そして厳しい言葉がありました。わたしはそのことによって、精神的に迷っていた心のもやのようなものが、消え去ったかのように思われました。
それから息子は、一人親元を離れて寄宿舎生活をすることになりました。私は、「できれば

 

 

 

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